長崎県 「EM 菌活用による内海湾の浄化」

2013.12.13 Friday

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    http://www.doboku.pref.nagasaki.jp/keiji/gijutuhappyo/h16/ronbun/11.pdf
    EM 菌活用による内海湾の浄化について 
    (幡鉾川河口の環境回復を図る) 
     
    壱岐支庁 建設課 
    1. はじめに 
    幡鉾川は「のどかな田園風景や自然環境との調和に配慮した多自然型川づくり」をテーマ
    として、圃場整備と総合的に整備する「幡鉾川流域総合整備計画」の策定を行い、平成4年
    度に幡鉾川本川及び支川3河川(池田川、日の本川、町谷川)の改修事業に着手した。 
    改修工事を実施するにあたり、幡鉾川河口部に汚濁防止フェンスを設置し進めていたが、
    平成9年と11年の豪雨時に汚濁防止フェンスが破損し、大量の土砂が内海湾へと広がった。
    内海湾では多くの養殖等が行われているが、主に真珠養殖とアオサやワカメの養殖が行われ
    ており、濁りによる大きな被害を引き起こしてしまった。様子を写真1、2の真珠養殖のア
    コヤ貝が物語る。養殖関係者からは漁協を通じ、濁りによる洗い回数増加の苦労や被害に対
    する養殖経営の不安等により、補償及び対策について強く要望され、幾つかの対策を行って
    きた。例えば各工事箇所に於ける濁水処理施設の設置や汚濁防止フェンスの二重化等である。
    しかし、実際に関係者が困っているのは内海湾に流出した土砂であり、中でも微粒子による
    被害であったため、その微粒子に対する対策が必要となった。そこで試験的に人工コンブに
    より浄化を図ろうとの試みもあったが、その施設の割に効果が発揮できなかった。そんな中、
    目についたのがEM菌による底質浄化である。内海湾に流れ出た微粒子は海底に積もり、潮
    の流れの遅い内海湾では特にEM菌による底質浄化が効果があると思われ、環境調査の中に
    おいて試してみた。 
    平成15年度に改修工事が終了することにより、本格的に濁りや底質浄化について EM 菌
    による浄化に取り組んできたので、その過程について報告する。 
     
     
    2.EM 菌について 
    EM とは、Effective Micro-organisms(有用微生物群)の略語であり、生物にて有用な光
    合成細菌、酵母菌、乳酸菌、放線菌、糸状菌等の微生物の集合体である。自然界にたくさん
    いる微生物の中には、発酵食品に代表されるように、人間を助けるものも多く、とても身近
    な存在と言える。これらの微生物は普通は単独で利用されてきたが、条件を整えれば微生物
    同士はお互いに有用な共同作業ができるということである。 
    EM 菌は、底質浄化の過程において、ヘドロ中のアンモニア、メタンなどの有害物などを 
    エサとし、アミノ酸、糖類などの有用物質に変える力があるようだ。このためEM菌によっ
    てへドロの分解が進むと、食物プランクトン、動物プランクトン、次いで魚介類が増えると
    いう具合に、食物連鎖により生態系を復元すると考え利用されているものである。 
     
    3.EM だんごの作成及び投入 
    EM 菌による浄化を行う上でEM原液を直接投入する方法もあるが、野球ボール程度の大
    きさに、にぎって投入する方法がある。これを通称EMだんごと呼んでいる。だんごにする
    のは「底質の浄化」が目的であるからである。具体的には以下のような理由が挙げられる。 
    ‐化したい場所の底質と EM 菌を混合して養生することで、菌をあらかじめ底質環境に
    馴染ませ、ヘドロを餌とする EM 菌の活性を高めることができる。 
    EM 菌が海底まで確実に到着できる。海で原液を流すと拡散してしまうと予想される。 
    E着した EM 菌が長い時間その位置に留まることができる。 
    こつ譴 EM 菌が増殖し、周辺の底質に効果を波及させることが期待できる。 
    EMだんごの作成については多くの労力を要するため、私の職場内や壱岐市に呼びかけ内
    海湾浄化に賛同する職員により取り組んできた。今までに 10 回行ってきて、個数としては1
    回に 2,200 個〜3,000 個の作成をしてきている。1 回目はさすがに手探りの状態であり、作成
    と投入を同じ日に行い EM 菌が活性していなかったが、徐々に EM 菌の特性というものがわ
    かってきて EM 菌のにおいも強いのだが、今では慣れて不快感はなくなった。
    作成した EM だんごはコンテナに並べて、日陰で風通しが良い倉庫にて養生させた。季節
    により菌の繁殖に差があるため夏季は約1週間、冬季は約2週間養生させると、だんごが白
    い菌糸で覆われた。この状態がベストであると思われる。 
    EMだんごの投入は、被害を受けた関係者の協力を得て船を出してもらい、アオサ養殖{面 
    積 9,800m2(70m×140m)}にて行った。作業には2隻の船を使用し、私たち職員にて 4〜5 m2
    に1個を目安に等間隔に投入する。 
     

    4.底質調査の結果及び考察 
    底質の採取は EM だんごの投入時にできるだけ併せて実施してきた。採取位置は、図1(前
    記)に示す2カ所{養殖場内及び対照区}であり、採取した試料は、低温保管し分析試料と
    した。調査項目は有機汚濁物質として COD(化学的酸素要求量)、IL(強熱源量)、T−S(硫
    化物)、泥分である(図2)。 
    COD とは底質中の有機物等汚染源となる物質を酸化力の強い試薬で酸化するときに消費
    される酸素量を表したもので数値が高いほど汚染物質の量も多いということを示す。 
    IL とは乾燥させた底質を 600℃で燃やしたときに減る量を燃やす前との重さの比(%)で 
    表したものである。有機物は燃えるという性質を利用して、有機物の量を表す方法である。
    数値が高いほど有機物が多いことを示す。 
    T−Sとは底質中の全ての硫化物である。有機物が海底に沈降し、その分解によって酸素が 
    消費されて還元状態になると、硫酸塩還元細菌の増殖によって硫化水素(H2S)が発生し、
    この硫化水素が底質中の金属等と硫化物を生成する。排水中の有機物や生物の死骸に含まれ、
    数値が高いほど有機物が多く、底質が還元状態にあることを示す。 
    泥分とは底質の小石、貝類、動植物片などの異物を除いた後、目合い 74μm のふるいにか 
    けた時の「ふるいにかける前の試料の全重量」のうち、「ふるいを通過した試料の重量」の
    占める割合(%)である。 
     
     以上の結果から、EMだんごを投入したアオサ養殖場と他の場所を比較すると、若干の向
    上がみられるものの、まだ2、3年の追跡調査を必要とするようだ。 
    しかし、濁りの発生後、消滅していたアマモ(水質のよい所に出る藻類)について、EM
    だんご投入前と比較すると、消滅する前の状態に戻り大きく生長しているのが確認されてお
    り、EM菌が確実に底質を浄化していることが示された。アマモというものは潮流を和らげ、
    産卵の場を作り、外敵からの隠れ場にもなるため、小型動物の生活の場所となる。さらに、
    アマモは水質浄化の面でも重要な役割を果たすため、回復してきたことで内海湾の復活に明
    るい光が差し込んできた。EM だんご投入により、復活し変化した海底状況の写真を下に示
    す。EM だんごを投入していない箇所はシオミドロ(海底の状態がよくない場所に出る藻類)
    が広がり、海底まで日の光が届かずヘドロ化が進み、底質の悪化を促進していると思われる。
    このように EM 菌による効果がはっきりと見えて、ますます EM 菌のすごさ(エネルギー)
    を知ることとなった。 

    被害を受けた関係者へも話を聞いてみると、アオサ養殖をするのに竹を立て網を張るとい
    う作業があるのだが、「竹を抜くとヘドロの臭いがしたが、最近は臭いがしなくなった。EM
    だんごをまいた所が白く広がっている。」とのことで、EM 菌は臭いまで消して、浄化の為の
    活動を活発に行っている状況がよくわかった
    。 
    アマモの復活やヘドロの臭いの除去、さらには各調査項目の少しではあるが数字のさらな
    る改善など、内海湾回復の明るい将来が見えたのだった。 
    もちろん、何年もかけて汚した海であるので、回復へも何年もかかるかもしれない。しか
    し、少しずつの効果を励みに、私たちは EM 菌による内海湾浄化への取り組みに、これから
    も頑張っていきたい。